ファッション業界では生成型人工知能(GA)の活用が広がり、ファッションショーのランウェイで披露される最新スタイルにAIが取り入れられたり、一般流通用の服作りに使われたりしている。
しかし、偽造やデザイン盗用を防ぐための国や業界のガイドラインはなく、解決すべき課題がいくつかある。
日本のブランド「ヨシオクボ」の2025年春夏コレクションから、レーススーツのようなデザインの白いジャンプスーツが2024年9月の東京コレクションで発表された。このジャンプスーツのパターンは生成型AIで作成された。
デザイナーの久保嘉雄さん(50)は、2シーズン連続で生成型AIを活用している。
読売新聞
久保嘉雄さん
久保さんが生成型AIを使うことにしたのは、最新技術を使って服をデザインするのは面白いと思ったからだ。しかし、常にAIの提案に手を加えたり、自分なりの工夫を加えたりして、よりオリジナリティのある服に仕上げている。
2024年秋冬コレクションでは、久保氏はAIにバルーンの模様を作るよう指示。その後、バルーンに陰影を付けて3Dのように見せた。
「デザイナーは完成品がどのようなものになるかイメージを持っていなければならない」と久保氏は語った。
さまざまな分野で利用が広がっているジェネレーティブAIは、ソーシャルメディアの販促資料の作成だけでなく、デザインの作成にもファッション業界で活用されている。
ファッション業界向けに特別に設計されたテキストと画像を生成するAIツール「Maison AI」は、ユーザーの選択と指示に応じて、模様やデザイン、モデルを作成する。
Maison AIを開発した東京のOpenFashionは2024年にコンペティションを開催し、11月に発表された優勝者の作品は、モデルや背景画像がAIによって作成されたにもかかわらず、非常にリアルに見えた。
AIの活用はファッションショーやコンペティションに限らない。名古屋を拠点とする大手繊維商社、豊島商店によると、2024年1月に発表した自社開発の「バーチャルスタンダードAIパターン」は、すでに大手アパレル企業の新商品開発に活用されているという。
OpenFashion提供
左:山茶宗がデザインした「メトロポリタンクチュール」右:酒井智史がデザインした「東京生花色AI図案部・令和琳派」
このシステムでは、例えば10種類のテンプレートから「花柄」を選び、「爽やか」というキーワードを選ぶと、AIが1~2秒で約100種類のパターンを提案。画像の編集も簡単。
「クライアントの要望に合わせて何度も修正する時間が半分に短縮され、品質向上につながった」と、同社でデザイン企画を担当する加藤智史さんは語る。
経済産業省は24年にゲームやアニメ、広告などコンテンツ産業向けのガイドラインを作成し、生成AIの活用例や法的措置などを解説した。
しかし、ファッション業界にはそのようなガイドラインはない。ファッション業界のメーカーやブランド各社が自ら判断するしかない。
「生成AIの導入はこれまでにない世界観を生み出す可能性があるが、人間の創造性を弱める恐れもある」と、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構の菰田浩事務局長は指摘する。
AI以前から、模倣やデザインの盗用は業界で問題になっており、対策も課題となっている。
「海外の動向も注視しながら、必要な議論を深めていきたい」と菰田事務局長は述べた。